鹿革に漆で模様を描く「甲州印伝」。
その色彩の広がりを生み出しているのは、もうひとつの伝統技「更紗(さらさ)」です。
一色ごとに型紙を替え色を重ねていく技は、漆付けと同様に高度な技を要します。
やわらかな山吹色に染めた鹿革に、更紗で多彩な色を重ね、さらに艶やかな漆模様で覆う。
伝統の技が色褪せることないよう、印傳屋はこれからも更紗の印伝をつくり続けていきます。
更紗とは、インドやジャワなどから南蛮貿易によってもたらされた模様染のこと。
江戸時代には京都や堺、長崎などで和更紗がつくられるようになり、
印傳屋もこの技法を印伝づくりに取り入れ、代々受け継がれるようになりました。
同心円の一部が波のように重なり合った伝統模様。
名の由来は祝いごとに舞う雅楽「青海波(せいがいは)」の衣装の模様からといわれ、
穏やかな波が続く様子が描かれた吉祥模様とされています。
毘沙門天は古代インドの財宝の神が起源。
日本では戦の神や七福神の一つとして信仰されています。
京の都を守護する教王護国寺(東寺)の毘沙門天が身につけている鎖鎧に、
亀甲の模様が彫られていることから「毘沙門亀甲(びしゃもんきっこう)」と名付けられました。
古代の勾玉(まがたま)を模した、水の渦巻を文様化したなど諸説あります。
「巴(ともえ)」には数や形状などで多くの種類が存在し、家紋にも多用されました。
印伝の巴模様は山形の幾何文や花文などを取り入れた独自の創作模様です。